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中規模企業の成長をサポートする 3 つの戦略

テクノロジーと
ビジネスノウハウの融合

CIO の I は、Information(情報)を意味します。私達が行うことはすべて情報によって決まります。指針となる情報がなければ何かを決定することも、目的をもって行動することもできません。

CIO は組織における情報の管理者として、情報の蓄積や体系化、保存、処理、分析計画の立案、そして管理を行います。情報こそがグローバル経済における通貨となりつつある今、情報を理解し管理するという独自の能力をもつ CIO の役割はより戦略的なものへと変わってきました。

情報を管理するために必要となるスキルもまた変化しています。CIO に求められる役割は、単に IT を「管理」することから、組織が競争上の優位性を活かせるようにサポートすることへと変わってきたのです。今日の経済環境では、これからの CIO が企業の戦略的成長計画を推進し、市場機会を広げていくためには、情熱やリーダーシップに加え、技術的な裏付けのあるビジネス知識を重視することが求められています。

Forbes 誌が行った「CIO Transformation Survey」は、CIO の役割の変化について、具体的にはより広い範囲でリーダーシップの責任を持つ役割へと移行していることを指摘しています。Forbes 誌は、CIO の種類を以下の 4 つに分類しています。

  • 変革者:重要なイノベーションを通じてデジタル化の取り組みをリードする
  • 提唱者:新しいデジタルの概念を試し、推進する
  • 貢献者:一般的に自身で変革プロジェクトを立ち上げることはないが、サポートやガイドを提供する
  • 保守担当者:主に既存システムが安定して稼働するように注力する

デジタル的に成熟した企業で働く CIO の大半が変革者や提唱者に分類されていることは当然と言えます.向上心が強く戦略的な「これからの CIO」 となるには、ビジネス知識の習得に照準を合わせ、最高の変革者や提唱者としてのスキルや特性を学ぶ必要があります。

ビジネス プロセスを Web ベースのインターフェイスで使えるようにする、あるいはモバイルやその他のデジタル形式でアプリケーションを利用可能にすることは、ビジネスリーダーとテクノロジー リーダーの両方の視点を必要とするイニシアチブです。

ビジネス感覚を養う 4 つの方法

Gartner 社は同社のレポート「デジタル ビジネス時代の IT に不可欠な CIO のビジネス感覚強化 (CIOs Must Build Greater Business Acumen in IT for Digital Business)」の中で、デジタル ビジネス戦略を効果的に実行するために、2020 年までに IT 業界の全員に対し中級レベルのビジネス感覚の習得が求められるようになると予測しています。* そのためには、ビジネスを熟知し、事業全域にわたる業界リーダー達と交流を持ち、デジタル アジェンダを推進する必要があります。テクノロジーは基盤になりますが、ビジネスは物事を動かす考え方になるからです。

これからの CIO には、大きな IT 組織の運営だけでなく、新たなスキルと能力を身につけ収益目標に貢献することが求められます。Gartner 社や他機関の調査は、CIO と IT リーダーは以下を実現するスキルを身につけなければならないと指摘しています。

デジタル的に成熟した企業で働く CIO の大半が変革者や提唱者に分類されていることは当然と言えます。

パートナー:社内グループと協力し、デジタルの取り組みから新たなビジネス価値を生む

CIO は他の経営幹部と協力することで、各幹部の配下グループの状況が把握できるため、ビジネスのデジタル化に向けたサポートを得やすくなります。社内オペレーションと社外向けビジネスのためのデジタル戦略の策定を通じ、社員は新たな機会創出や競争優位性を生み出すために必要なものについて協力し合うことができます。社内と社外の両方でスマートな協力関係を築くことで、CIO は主導的な役割を果たすことができるのです。

効果的な協力関係を築くには、CIO がビジネスの様々な要素を理解していることが必要です。なぜなら、ビジネス固有の要件への対応、適切なテクノロジー ベンダーの特定、ビジネス目標にもっとも適した正しいテクノロジー アーキテクチャの構築ができることで、ビジネスをリアクティブではなくプロアクティブに主導できるからです。また、効果的な協力関係を築くためには、各グループに対する十分な理解も欠かせません。さらに各グループのビジネス全体への貢献度やその評価方法、短期および長期計画、事業目標達成への障壁を理解することも必要です。

CIO は、各リーダーが実行していることに対しデジタル戦略をマッピングし、ビジネス要件を継続的に満たすために彼らと協力して戦略を適応させ、改善するべきです。考えるべきは、大幅な経費節減や新しい収益機会、競争上の優位性といった確実なメリットをもたらすには、どのようにテクノロジーを用いてリーダー達の取り組みを改善すればよいか、ということです。

例えば、社員が減少傾向にあることを最高人事責任者 (CHRO) が把握するには、より優れたデータが必要です。一般的に IT 運用チームは、こうした課題に単発の解決策でアプローチします。離職者数や離職率、どの部門の社員の減少が最も多いか、そして問題の特徴を把握するため、基本的な分析を行うのです。IT 部門はこうした情報を比較的簡単に処理できますが、その情報を CHRO がどう扱うかには関与しません。肩書に「情報 = Information」が付く CIO にとってこれはたやすい仕事です。

しかし、より大きな価値をもたらす解決策は、CIO が CHRO と緊密に協力し、人事部門が必要とする戦略的かつ長期的なニーズに応えるテクノロジー ソリューションを導入することなのです。正しいデータをもとに、社員の減少を抑える自動プロセスはあるでしょうか?例えば、採用や人事考課の過程において、社員が離職する可能性の有無やその時期の予測・分析はできるのでしょうか?CIO がこれらに取り組むには、あらかじめ人事部門の業務内容と仕組み、CHRO が考えている戦略、そしてそのために重要なことが何かを理解しておく必要があります。CIO は、クラウドベースのソリューションや分析・予測等のテクノロジーを用いるなど、彼らが真に必要とする解決策を提供することができるのです。もちろん、その実現には、適切な相手とのコラボレーションと相互理解は不可欠です。

CIO は、各リーダーが実行していることに対しデジタル戦略をマッピングし、ビジネス要件を継続的に満たすために彼らと協力して戦略を適応させ、改善するべきです。

再構成:ただのテクニカル アドバイザーではなく、ビジネス アドバイザーになる

CIO の役割はビジネスとテクノロジーの専門知識の融合にあります。その範囲と影響力は、今ではビジネスのあらゆる面に及んでいます。ロチェスター大学の CIO 代理 ジョン・バーデン氏は次のように述べています。「IT 部門はもはや補佐的なサポート職務にとどまりません。日々の業務に深く関わるのはもちろん、現場での課題解決に必要なアドバイスも行い、さらには解決策をどのように提供するかのオプションまでも提供しているのです」

これまでの CIO の多くは内向き志向が強く、その意識の大半は、社員や身近なステークホルダーに価値の高いテクノロジー ソリューションを提供することが占めていました。これがいま急速に変化しています。Forbes 誌が行った「CIO 変革調査 (CIO Transformation Survey)」では、変革者として位置づけられる CIO の 83% は、今後 5 年間でデジタル分野の取り組みとプロジェクトに 50% 以上の時間を費やす予定であることが示されました。そのためには CIO が技術的な専門知識に加え、自らビジネス感覚を養うことで、ビジネスの効率化はもちろん、収益性の高い新たなデジタルチャネルを生み出すデジタル リーダーシップ戦略を実行していくことが必要です。Gartner 社は、「これらの役割は、IT 部門を取引や運用上のサポートレベルから、ビジネスパートナー、変革推進者、変革者のリーダーなど、より高い成熟度レベルに引き上げるために重要です」*と述べています。

Forbes 誌の「CIO 変革調査 (CIO Transformation Survey)」の中で、CIO 達はこの変革を、バック オフィスからミドル、フロント オフィスへと移行する、顧客対応強化のための活動だと表現しています。これまでのタスク重視型から、よりイノベーションを重視するビジネス コンサルタント型に移行する、「ビフォー & アフター」のシナリオと捉えているのです。最新の CIO 変革調査によれば、CIO は今後 5 年間で、42% の時間をデジタル活動に割くことになると回答しています。 

焦点を変えるということは、ビジネス目標とテクノロジー目標を同じように重視することを意味します。これを実現するため CIO には、顧客や財務の収益性を確認し、新たな事業機会を発掘し、テクノロジー導入時にはコストも考慮するなど、これまで持ち合わせていなかった新たな視点が求められるのです。ビジネス プロセスを Web ベースのインターフェイスで使えるようにする、あるいはモバイルやその他のデジタル形式でアプリケーションを利用可能にすることは、ビジネスリーダーとテクノロジー リーダーの両方の視点を必要とするイニシアチブです。他の経営幹部と協力し合うことで、CIO は社員の貢献意欲、使用頻度、価値を向上させる現実的なソリューションを提供できます。

CIO は他の経営幹部と協力することで、各幹部の配下グループの状況が把握できるため、ビジネスのデジタル化に向けたサポートを得やすくなります。

周知させる:ビジョンを伝える方法を学ぶ

多くの社員にとって IT 部門は、ノート PC がフリーズした時に思い出す程度でしょう。それが現実です。故障修理や新しい機器の設置の時を除けば、あまり IT 部門が印象に残ることはありません。ですが、CIO が他のビジネスリーダーと協力し、会社全体にデジタル イノベーションの新しい文化を広めれば、誰もがその影響を理解できます。デジタル イニチアチブがビジネスをどのようにサポートするのかを明文化し、そのメッセージを広く周知する。これは CIO の重要な任務です。

Gartner 社のレポートでは、CIO に最も必要なスキルとして「コミュニケーション力」が挙げられています。同レポートは、「CIO と IT リーダーは、IT とその活動、パフォーマンスの役割を、ビジネス戦略と業績に一貫して結びつけるためのコミュニケーション戦略を用いるべきです」*と指摘しています。ビジョンはもはや単に IT が関わるだけのものではなく、デジタル変革がもたらすビジネスの成功に向けたロードマップとなるのです。これは大きな変化ですが、しっかりとしたリーダーシップがあれば、CIO は社内の混乱を最小限に抑え、うまく舵を取り、必要に応じて進路を修正し、誰ひとり取り残すことなく前進することができます。 

CIO は企業のデジタル ビジョンを伝える必要があります。オンデマンドの Web サービス、API、ハードウェア、そして標準化されたプラットフォームに依存しないテクノロジーを協調させることで、企業と顧客の距離は縮まり、社内オペレーションも改善されます.

Gartner 社は、CIO と IT リーダーが IT コミュニケーションに関して次のようなアプローチをとることで、職場におけるビジネス コンテクストの意識を高められると提案しています。

  • トップダウンの段階的なコミュニケーションを採用することで、重要なメッセージが組織全体に渡り、明瞭かつ正確な文脈で確実に伝えられるようにする。ビジネス分野、外部パートナー、さらには顧客からもゲスト スピーカーを招き、IT スタッフがビジネスの基本とエコシステムに触れる機会をつくることで、常に市場の傾向や顧客ニーズに精通しているようにする。
  • ポートフォリオ計画の会議中やタウンホール、チーム会議を通じた定期的な IT 情報の更新など、必要に応じて IT 戦略の鍵となる要素を取り入れ、その重要性を強調する。これにより、業務の効果的な優先順位付けを行い、IT スタッフのコミットメントを強化、維持するとともに、チームが一丸となって取り組むべきデジタル ビジネスの戦略的優先項目について、全員の足並みを揃えることができる。
  • ストーリーテリングの技術を習得する。これは、人の注意を引き、あらゆる複雑で抽象的な概念や戦略の方向性の理解を促進し、最終的には人々のやる気を刺激しアクションを起こすことに非常に効果がある。

言い換えれば、CIO はこれまでの安全地帯から一歩踏み出し、IT 部門の取り組みが持つ力を他部門に周知させる方法を見つけなければならない、ということです。それが対面でも、ウェビナーでも、それ以外の手段であっても、決して避けて通ることはできません。CIO のメッセージを耳にする機会が増えるにつれ、人々は、それが一回限りのプロジェクトや目標ではないこと、さらに自分自身とは何の関係もない企業スローガンとは違い、自らの業務に深く関係することだと認識するようになるのです。

CIO は、ビジネス知識を深め、包括的なデジタル戦略を先導できるような技能を磨く必要があります。CIO は次のような能力の向上を目指さなければなりません。

  1. デジタル面での事業目標を達成するために、卓越した才能を見出し雇用する
  2. データ サイエンティスト、API 開発者、ビジネスアナリスト、その他イノベーションをもたらす人材からなるチームを編成し、企業内にテクノロジーの価値を浸透させる
  3. リスクを恐れず挑戦し、失敗も、必要な変革の一部として受け入れる
  4. デジタル変革への同業他社の対応をベンチマークする 
  5. 幅広くテクノロジーを浸透させ、使用上の障壁となっているものを取り除く

繋がる: 顧客を第一に考える

3,300 人以上の CIO と IT リーダーを対象に行われた Harvey Nash 社と KPMG 社の合同調査「The Creative CIO」では、CEO からの要求に対する CIO の対応に、大きな変化が見られることが指摘されています。今や CIO は、経費削減 (37 %) より売上に貢献できるプロジェクトにより力を入れている (63 %) というのです。テクノロジー、顧客、そしてビジネス目標間の戦略的な繋がりは、かつてないほど密接になっています。「Redefining Boundaries: Insights from the Global C-Suite Study」では、IBM はそれぞれの顧客とのデジタルな関わりが 19% 増加すると予想しており、Forbes 誌は、「変革者」となる CIO の 51% が、今後 2 年間で「顧客との直接のコミュニケーションを大幅に増やす」予定であることに注目しています。

こうした変化が示すのは、CIO がその専門知識を技術的機能ではなく、顧客を対象としたデジタル ビジネス戦略に活用することが求められているということです。課題は「顧客を第一に」考えることであり、そのためには CIO はテクノロジーが会社の外でどのように使われているかを考えなければなりません。これまでの CIO は、顧客対応を行う他部門をサポートする立場でした。 しかし新たな目標を達成するには、CIO 自身が直接顧客と関わる方法を学ぶ必要があるのです。

人の注意をひくストーリーテリングの技術を習得しましょう。

CIO は、テクノロジー リソースを活用することで、デジタル チャネルを通して社内ユーザーと顧客の両方と繋がる必要があります。クラウドベースのソフトウェア アプリケーション、他のアプリケーションへの API 接続、モバイル エンゲージメント、その他のタイプの Web ベースのアクセスなど、CIO はすでにこうした繋がりには精通しています。しかし、顧客エンゲージメントの要求が高まるにつれ、こうした繋がりを会社を越えて拡張する必要がでてきたのです。もちろん、各レベルでの広範囲に渡るセキュリティとアクセス管理は欠かせません。開発チームがサードパーティーの開発者と、データ アクセスやアプリケーションの機能に関して協力する機会を作ることもまた重要です。 

そしてもっとも重要なのはユーザー エクスペリエンスです。これは、CIO が社員、パートナー、顧客のために準備しているアプリケーションのインターフェイスと使いやすさだけではなく、IT チームやツールを活用する上でのエクスペリエンスも意味します。ユーザーは、IT 組織のサービスやブランドを直ちに使用することができ、その価値を見いだせなければなりません。しかしそのためには、技術リソースがどのように事業の拡大につながるのかを、チームがしっかりと認識していることが必要です。多様な選択肢のある今日の世界では、優れたユーザー エクスペリエンスを提供できない CIO や企業は、淘汰されていくことでしょう。

この 10 年で生まれた新たな期待や課題により、CIO の役割が大きく変わったことはまぎれもない事実です。効率やプロセスが CIO の日々の課題であった時代とは異なり、CIO は今やビジョン、デジタル戦略、そして事業目標と密接に関係しています。これは取りも直さず、会社のニーズ、市場の需要の表れであり、殆どの CIO が定期的に示してきたように、CIO には常に「変わり、適応する」能力があることを物語っています。

役割を効果的に果たすために必要なスキルは変わり、再改革よりはむしろ、会社の進むべき道を示すビジネスとテクノロジーのリーダーとして、会社内での CIO の立場を再確認する事が必要になっているのです。 

 

*Gartner, “CIOs Must Build Greater Business Acumen in IT for Digital Business,” Lily Mok, Diane Berry; 20 May 2016.